病気について
2011-02-06 12:17:00
糖尿病網膜症
概要
2007年の厚生労働省による調査によれば、糖尿病が強く疑われる人は890万人、糖尿病の可能性を否定できない予備軍の人は1320万人いると言われ、日本人の40歳以上の3人に1人が糖尿病の可能性があるということになっています。
糖尿病ではいろいろな合併症が生じますが、眼の合併症の代表的なものに糖尿病網膜症があります。網膜症の頻度は約40%とされ、現在も我が国における中途失明原因の第二位です。
網膜とは、わたしたちの眼の奥にある部分で、カメラのフィルムに相当するところです。わたしたちがものを見るために、とても大切な役割を果たしています。網膜には細かい血管が全体に張りめぐらされていますが、糖尿病によって血糖値の高い状態が続くと血管に多くの負担がかかり、血液の流れが悪くなってきます。
細かい血管が密集している網膜は、高血糖の影響を非常に受けやすいのです。その変化は網膜の機能を徐々に損ない,最終的には著しい視力低下、そして時には失明につながります。糖尿病網膜症を知ること、それが糖尿病網膜症から目を守ることの第一歩です。
治療
糖尿病網膜症の治療は、その病期によって異なります。眼科的な治療としては、網膜光凝固術(レーザー光凝固)、硝子体手術があります。
1. 血糖コントロール:一般的に、単純網膜症の段階では血糖コントロールを良好に保っていくことで,眼底所見が自然に軽快することが知られています。血糖コントロールが安定していることは、網膜症の進行を予防することにもつながりますので、大変重要です。
2. 網膜光凝固術(レーザー光凝固術):虚血に陥った網膜から新生血管が生じることを防ぐために、レーザー光凝固術を行います。
新生血管とは,血液の流れが悪くなったり止まってしまったりした時に、それを補うために急いで作られる新しい血管です。糖尿病網膜症によって失明に至る場合は,この新生血管が大きく関わっています。
新生血管は血液の流れの悪い部分、すなわち虚血網膜が存在するために生じるわけですから,虚血網膜をレーザーで処置することによって新生血管をつくる反応を抑えることができます。
よってレーザー光凝固術は網膜に虚血のある段階,増殖前網膜症と増殖網膜症がその対象です。外来通院で、3-4回に分けておこなうことが一般的です。一回の治療は、約15分程度となります。
目薬の麻酔でおこない、まぶしい感じはしますが、ひどい痛みはありません。レーザー治療は、早期であれば80パーセント有効で、時期が遅くなると有効率が 50~60パーセントに低下します。この治療は視力がよくなるわけではありませんが、網膜症の進行を予防するために大変有効です。
3. 硝子体手術:レーザー光凝固術で抑えきれなかった増殖網膜症に対しては、硝子体手術と呼ばれる手術療法をおこないます。
前述の硝子体出血や網膜剥離を生じた増殖網膜症がその対象となり、硝子体内の出血を取り除いたり、出血の原因となる新生血管を処置したり、剥がれた網膜を元にもどすことなどが、手術の目的となります。
この手術はむずかしく、視力や視野などの現状維持がその目標となります。約2週間程度の入院が必要で、手術は局所麻酔で行うことが一般的です。
良好な血糖コントロールを保つこと,そして眼科で眼底検査を定期的に受けて少 しでも早い段階で網膜虚血を発見すること、がとても大切です。自覚症状がない時、その時期こそが糖尿病網膜症による視力低下を防ぐ時期なのです。